戦国四君の一人・春申君はなぜ殺されたのか?

原泰久『キングダム』25巻より

中国戦国時代の四公子の一人春申君。性は黄、名は歇(あつ)。楚の宰相として国を立て直しましたが、最期は暗殺されてしまいます。

楚を立て直し、戦国四君と言われた春申君はなぜ殺されてしまったのかここでは簡単に解説していきます。


登場人物

春申君
戦国四君の一人。楚の宰相となり、国を立て直す。

考烈王(太子完)
太子時代に人質として秦に送られる。後に楚王に即位する(考烈王)。

昭襄王
大国「秦」の王。始皇帝(政)の曾祖父。

李園
春申君の食客の一人。自分の妹を使って出世を企む。

李環
李園の妹。

楚を滅亡から救い、太子完を逃がす

使者として秦にいた黄歇(春申君)はそこで秦が白起将軍に楚を攻めるよう命じたのを聞きます。さらに秦は魏と韓にも楚制圧の協力を要請していました。

黄歇は急いで秦王・昭襄王に書簡を送りました。その内容は楚を攻めても敵国が利するだけであり、秦と楚が同盟を結ぶ方が両国のためになるといったものでした。

昭襄王はこれを受け白起将軍の出陣を中止させ、黄歇と面会します。そこで楚との同盟の条件として楚の太子である完を人質として秦に送るよう命じます。楚王はこれを認め太子完を人質として秦に差し出しました。これにより同盟はまとまり楚の滅亡はまぬがれたのです。

それから数年後、楚の頃襄王(けいじょうおう)が病で倒れます。人質として秦にいた太子完は楚に帰らなければ他の公子が即位してしまうという状況に置かれました。そこで黄歇が一計を案じ、太子完を楚まで逃します。

それを知った秦の昭襄王は激怒し、黄歇を殺そうとしますが、大臣に「太子完は即位した後必ず黄歇を重用するので友好のため生かして帰国させた方がいい」と説きます。昭襄王はそれに納得し黄歇に帰国を許したのでした。

それからすぐに太子完は即位し考烈王となりました。黄歇は宰相となり、このときに春申君という名をもらいました。そして3000人の食客を抱えるようになったのです。

李環の妊娠

楚の宰相として国を立て直していた春申君でしたが、悩みがありました。考烈王が子宝にめぐまれないということです。そんなとき李園という人物が春申君の食客となりました。李園は自分の妹を楚王の側室にしたいと考えており、春申君に近づいたのです。

あるとき李園は妹が斉王から求婚されていると春申君に話しました。それを聞いた春申君は斉王が求めるほどなら美人に違いないと思い、一度妹と会わせて欲しいと李園に頼みます。

そして李園の妹と会った春申君はその妹を気に入り側室にしたのです。その後、李園の妹・李環は春申君の子どもを妊娠します。それを聞いた李園はあることを企みます。

李環は春申君に「子どものいない考烈王が亡くなったらご兄弟が即位されるが、ご兄弟は果たして考烈王と同じように春申君を重用してくれるでしょうか?ご兄弟はお気に入りの人を重用し春申君は今の地位を剥奪されるでしょう」と言い、更に「私を楚王に進めていただければ、宮殿で子を生みそれが男子であれば、楚の世嗣となり、楚のすべてはあなたのものです」と説きました。

春申君はこれにまんまと乗っかり、李環を楚王に献上します。楚王は李環を寵愛し、兄の李園も国政に携わるようになりました。そして李環は男子を生みました。

春申君の暗殺

李園の計画はまだ終わっていません。真相を知っている春申君がこの秘密をもらす可能性とこの秘密をおさえて李園が権威をふるうことを妨げるかもしれません。春申君を殺すことで李園の計画は完結するのです。

春申君の食客の一人、朱英は李園の計画を見破っていました。春申君に李園を殺すことを進言しますが、春申君はこれを聞き入れませんでした。春申君は李園を弱い人間だと見くびっていたのです。

進言を聞き入れられなかった朱英は自分にも危険が及ぶと考え春申君のもとから去りました。そしてその17日後、楚王・考烈王が死にます。李園は宮殿の門内に刺客を待機させ、春申君が宮門を入ったところを襲わせ殺してしまったのです。さらに李園は春申君の一族も皆殺しとしました。春申君の首は城外に捨てられたといいます。

そして李園の計画通り李環が生んだ子どもが王に即位し、幽王となりました。

春申君は若い頃、一通の書簡で国の危機を救いましたが、後年は王位に色気を見せたためあわれな最期となってしまったのです。史記の作者・司馬遷は「春申君は耄碌した」と記しています。

漫画『キングダム』では

春秋戦国時代を舞台とした漫画『キングダム』でも春申君暗殺のエピソードが描かれています(単行本41巻)。

史記と同様、李園によって殺されますが、理由が少し違います。考烈王の弟が次期王とされていましたが、その弟の異常性から、春申君と李園は、春申君の子どもを身籠った李環を考烈王に献上し、生まれてきた子を王位につかせようと画策します。しかし途中で春申君が考えを変え王弟を即位させようとしたため、春申君と李園はぶつかります。そして互いに刺客を送り、結果春申君は殺され、李園が生き延びました。

そして、李園は春申君の死によって混乱した楚の国政を立て直すため、キングダムのオリジナルキャラクターである媧燐に宰相につくよう頼むという流れになっています。

キングダム 41 (ヤングジャンプコミックス)

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